フィレンツェからバーリへ!
これはもはやドラマだ!?
波乱万丈ポレンタ日記の巻
2023.3.20
カ・モンテ オンラインを運営する、モンテ物産の新入社員二年生、エリナちゃんが、部署の垣根を越えて色々な先輩に自社の商品について教えてもらうという、この企画。
エリナちゃんのお勉強に、読者の皆様もお付き合い。イタリアの食文化を深く楽しもう!!
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お疲れ様です!坂本先輩!まず、簡単に自己紹介をお願いします!
- 坂本先輩
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えーっと、営業推進部の坂本です。入社5年目ですが、最初は通訳としてイタリアのワインや食材のメーカー、シェフなどと全国各地で行われるイベントなどに同行して通訳をしたりしていました。
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大変そうなお仕事ですねー?
- 坂本先輩
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そうですねー、だいたい一日一都市で一週間ほど日本全国を回るので、朝起きたらまず移動!そっから夜までずっとなので、ずーーーーっと喋ってる人だと本当辛いですよ(笑)3年間その仕事を続けたんですけど、ようやく慣れてきたかなという頃にコロナ禍になってしまったので、来日イベントがなくなりましたが・・。
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そうだったんですねー!私はコロナ禍に入社して、まだ来日イベントみたいなのを経験していなかったので、知りませんでしたー。ところで今日はポレンタについて教えてくださるとのことですが、坂本先輩ってプーリアに長くいらしたんですよね?ポレンタって北イタリアの食べ物のイメージですが・・・
- 坂本先輩
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そうそう、数えてみたら、プーリアは6~7年くらい。その前に住んでいたのはフィレンツェとシエナとローマと、あとは絵画の修復の勉強をしていたので研修とかで山の中の教会に1か月こもったりとか~、、
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えー・・・!?(・・・・頭の中が大混乱・・・)坂本先輩ってイタリアで何をされていたんでしょうか??
- 坂本先輩
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もともとは学生時代に絵画の修復の修行で、イタリアに。そのあと仕事で~例えばフィレンツェのサン・ロレンツォ教会あるじゃない?メルカートの横にある。最初の2年くらいは、あそこを修復してる工房で。
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へ~カッコいい!!美術系ですかー?
- 坂本先輩
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みなさん結構美術系と思われるんですけど、化学系も重要。修復って洗浄や消毒が大事なので。虫食いとカビとか、油絵だったら油分の酸化を溶剤でつなぎ合わせるとか、そういう仕事です。絵画って100年に一度は修復しなきゃいけないと言われてるんですけど、私が勉強し始めた頃ってちょうどその100年のサイクルが一周した頃で、修復家はみんな仕事のない状況だったんですよね。
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なるほど~!それは大変そうですねー。
- 坂本先輩
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最初のうちは色々アルバイトとかして食い繋いでいたんですけど、就職先が決まらないとなかなかビザが取れないんですよ。お金持ちの子とかは語学学校に入ってビザを切り替えて滞在を延長したりするんですけど、その頃ユーロも高い時期で、私にはそんな余力もないし・・・。で、いよいよビザが切れるってなって、イタリア中で仕事を探してたらバーリ(プーリア州の州都)の日本食レストランで仕事が決まりそうで、バーリがどこだかわからないから、東京から静岡に行くくらいの感覚で「じゃあバーリに行ってきまーす!」って(笑)
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プーリアはイタリア半島のかかとの部分の州ですもんねー。あ、先輩、調べると東京から青森もしくは、広島くらいの直線距離みたいです(笑)
- 坂本先輩
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そもそも、フィレンツェからプーリアに行く人なんていないんです。この先どうするかとか相談していた周りの友達にも「なんでバーリなの?なんでミラノとかローマとか、サン・ジミニャーノだっていいじゃん」「わざわざイタリアに来てるのに、なんでバーリなんか行くのよ?」みたいな感じで、凄い止められたんですよね。治安とか、イメージも悪いって。もともとフィレンツェの人って内向的な人が多いし、もっと近くにいっぱいあるから、早まるな!って。でも、言われれば言われるほど行きたくなって、行くって決めて飛行機取ったのね。なけなしの金を使ってライアンエアーで。
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ライアンエアー安いですよねー、格安航空。
- 坂本先輩
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で、いよいよ明日出発ってなったら、アイスランドの火山が噴火して、火山灰でヨーロッパ中の航空機が止まっちゃって!!2010年に起きた、エイヤフィヤトラヨークトルの噴火。
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えー!!!!!
- 坂本先輩
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格安のチケットだから払い戻しもしてくれないし、友達もみんな行くなってとめるし、挙句の果てに山は怒ってるのか爆発するし・・・・。その時、フィレンツェ郊外の半地下の安っい部屋に住んでいたんだけど、半地下だから気持ちも沈んでいくし、もう日本へ帰ろうと決めたの。でも、ちょっと経ったら、ナニクソと思って。これは日本に帰るだけのお金を残して、見るだけ見て、やるだけやってみようと思ったの。それでもう一度連絡したら「待ってます」ってことだったので。
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バーリに行かれたんですか!?
- 坂本先輩
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うん。それでようやく降り立ったバーリは、めっちゃいいとこで。とにかく天気が良くて、空が青いし、空気がカラッとしていて爽やかで。フィレンツェで聞いてた情報と全然違うなって思って。そもそもバーリ空港ってきれいだし、目の前海で開放感もあって。
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それは良かったですね~ぇ!!
- 坂本先輩
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それでまずは、面接に行ったのね、で、すぐ決まってヨロシクネーみたいな感じで。そのあと日本人のスタッフにせっかく来たんだから街を案内するよーって、そこで最初に連れって行ってくれたのが“バーリ・ヴェッキア”っていうところで。イタリア語で古いバーリって意味、ダウンタウン的な。そ・こ・が、治安が悪い。ちょっと前までは、マジでヤバい場所!
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え゛ぇ゛ーー!!!マフィアとかいるんですか?
- 坂本先輩
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マフィアもいるみたいだけど、それよりチンピラのほうが危ない。街の作りが迷路なの、ダウンタウン特有の。一回入っちゃうと抜けられないし、警察も追えない・・・。「そんなとこなんだよー」って案内してもらったのね。私も3年くらいイタリアにいたから、まあまあイタリア語はわかってたんだけど、そのバーリ・ヴェッキアに入った瞬間、周りが何言ってるか全然わかんなくて。
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方言ですか?
- 坂本先輩
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そう、方言がきついエリアなんだよね。ナポリでもローマでも、みんなそれぞれあるじゃない?関西弁みたいに、ちょっと語尾が違う感じで。けどそこは何言ってるか全然わかんない!人を挑発するようなアクセントっていうのかな「超怖い!」と思って。で、迷路を進んで行くと、道端でオレキエッテ(※耳たぶ型の丸い形のプーリアの郷土パスタ)を作ってるのよ。民家の前で、洗濯物が干してあって、その隣でおばあちゃんがオレキエッテを作ってて、更に隣でこーんなでっかいおばちゃんが大きい鍋でポレンタを揚げてるの。
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洗濯物、オレキエッテ、揚げポレンタ!?ストリートフードみたいな感じですか?
- 坂本先輩
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そう、名前はズガリィオッツェ(sgagliozze)って言うの。バーリのストリートフードって言ったらフォカッチャとかパンツェロッタの方が有名だと思うんだけど、バーリ・ヴェッキアのストリートフードって言ったらこれ!フィレンツェからやっとの思いでバーリに辿り着いて、仕事が決まって一安心して、満身創痍の状態で初めて口に入れた食べ物が、この揚げポレンタ。
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おおおおおおおおおおお~!!!!
- 坂本先輩
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海からくる潮風と、揚げポレンタの塩味がマッチして、更に疲労困憊の状態だったから、すごくおいしかった。バーリは日本人っていうかアジア人、更に女の子なんて全然いないから、珍しがられて屋台のおばちゃんに話かけられて。その方言とかもさっきまでは怖かったんだけど、それが心地よくなったのが、この瞬間でした。おいしい物は他にもたくさんあるんだけど、これが昔からのソウルフード。
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素敵ですね~、辿り着いた先のストリートフードで食べた揚げポレンタ。改めてポレンタってなんでしたっけ??
- 坂本先輩
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トウモロコシの粉です。もともとは15世紀にアメリカ大陸から持ち込まれたトウモロコシが、小麦の育ちづらい北イタリアの山岳地帯で食べられるようになったみたいですが、アドリア海側の海路で港のあるプーリアにも伝わって、こうやって食べられているみたい。だから同じ南イタリアでもティレニア海側のナポリでは聞かないもんね。
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確かにそうですね~。北イタリアのイメージです。
- 坂本先輩
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そう、それで、私そのままバーリに5~6年いたんですけど、最後はフリーランスで働くようになって、お金や時間に余裕ができたので、年末年始にコルティナ・ダンペッツォに行ったんですよ。ヴェネト州の北の方にある、有名な高級リゾート地。向こうの人って、スキーしなくてもスキー場に行くんですよ。日光浴したり、サウナとかエステ行ったり、リゾート感覚で。そこでミズリーナ湖っていう湖に散策に行って、すっごい寒いからもちろん湖の水は凍ってるんですけど。マイナス7とか9℃だったと思うなー、お腹もすいて、寒さにも耐え切れずに入ったレストランが、チロル地方の民族衣装みたいなのを着てる可愛いウエイトレスさんがいっぱいいて。そこで、ポレンタを食べました。多分人生2回目(笑)「お~、ここで出てきたかー」って。
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ポレンタの本場で、二度目の再会ですね!!
- 坂本先輩
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グーラッシュみたいな、牛肉とポルチーニを煮込んだ料理に添えてある、おかゆ状のポレンタ。いわゆるザ・ポレンタ。それもめっちゃ美味しくて、なんでこんなに美味しいんだろう?って、今になって思うんだけど・・・・・寒さだよね(笑)なので、どちらも、私の長いイタリア生活の中で印象に残ってる料理です。
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食事をするシチュエーションって大事ですよねー。他にはどんな食べ方があるのでしょうか?
- 坂本先輩
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煮込むのが主流だけど、それを冷ますと固まるので、揚げて、ポテトみたいにトリュフ塩とか、ブロード・ディ・ポッロ(チキンブイヨンパウダー)かけてみても美味しいかな。キューブ状にしてオリーブとかを乗せてピンチョスみたいにしたり、色々できると思います。
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揚げたてのポレンタ、美味しそうですね!お腹がすいてきました~。揚げポレンタにはどんなワインが合いますかねー?
- 坂本先輩
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ビールです!同じモレッティ(メーカー名)同じフリウリ(産地)、間違いないです!
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確かにモレッティ・ビールが合いそうですね!!それでは最後にラーモイタリアのお客様へ一言お願いいたします!
- 坂本先輩
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プーリアに長く住んでいたので、今日は何を紹介するか悩んだんですけど、日本では、プーリア料理の再現が難しいんです。食材の新鮮さに対してのこだわりがすごい強いので。例えばプーリアで有名な野菜、チーマ・ディ・ラーパ(カブの菜の花)もチーメ(上の部分)の柔らかいところしか使わない。フレッシュなチーズも有名だし、コッツェ(ムール貝)も生で食べるし。
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コッツェを生で食べるんですか!?美味しいんですか!?
- 坂本先輩
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美味しいですよー!でも、旅行中に生の貝は気をつけてください。あたると数日は苦しむよ。それでも新鮮な生の貝が食べたいって苦しい思いをしながらもプーリアの人は食べるんです。病院の救急外来で並んでるの、だいたい生の貝だから(笑)。それくらい新鮮なものに拘るプーリアで私が初めて食べた味、ポレンタの話でした。イタリアって有名な街は一通り行かれたって方も多いと思うんですけど、まだまだ知られていない変わった街、村、食材とかもたくさんあるので、コロナが落ち着いたら是非行って、本場のイタリアを楽しんでいただければなと思います。
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先輩、今日は素敵なお話をありがとうございました!
あとがき
今回は、イタリア滞在歴の長い坂本先輩にお話を伺いました!イタリア滞在時代のエピソードは、チラシに収まりきらないほどドラマティックで、映画を観たような気分になりました!
そんな坂本先輩の思い出のポレンタを、自宅で作ってみました。作り方は、沸かしたお湯に塩とポレンタ粉を入れて、15~40分煮込むだけ!とはいえ、ポレンタの粘り気が出るにつれて、だんだんかき混ぜる手が重くなってきて、意外と重労働。この手間暇がおいしさに繋がることを実感しました。
そのままでも素朴な味わいを楽しめますが、市販のビーフシチューに添えると相性抜群でした。揚げるともちもちした食感になって、「ブロード・ディ・ポッロ」をかけると、スナック菓子のように病みつきの味になりました!皆さんも、ご自宅で本場のポレンタ作りに挑戦してみませんか?
次回もお楽しみに!
今回ピックアップした商品
※掲載記事の情報は2022年3月にご購入者様へ配布した記事を元に作成したものです。
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