フランチャコルタとは?
イタリアが誇るスパークリングワインの魅力

フランチャコルタ1

ワインが生産されるロンバルディア州にミラノがあることからファッションとの結びつきも強く、日本国内でもファッション誌等で紹介されるなどイタリアのスパークリングワインとして有名なワインがフランチャコルタです。程良い果実感と穏やかなミネラル感で口当たりも柔らかく、和食との相性も非常に良いと言われているフランチャコルタはとても人気の高いスパークリングワインと言えるでしょう。
今回はこのフランチャコルタについて、どのような場所で造られ、他のスパークリングワインと何が違うのかを深掘りしていきたいと思います。

目次

フランチャコルタの基礎知識

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北イタリアのロンバルディア州にあるイゼオ湖の南側に広がる地域で造られる瓶内二次発酵のスパークリングワインです。かつて氷河だった山が溶けて、削られた氷河が運ばれた場所にイゼオ湖が生まれました。その際に運ばれてきた堆積物が層となって現在のフランチャコルタの生産エリアに広がっています。そのためフランチャコルタの地域内には砂や粘土、石灰などの様々な土壌と標高の違いが生まれる非常にユニークな生産エリアです。
使用出来るブドウ品種は主に白ブドウ品種が多く、シャルドネとピノ・ビアンコ、近年酸味を補うためにエルバマットと呼ばれるブドウ品種の使用も認められました。黒ブドウ品種はピノ・ネロのみが認められています。打栓前の瓶内最低熟成期間は18ヶ月以上、“サテン”と呼ばれるフランチャコルタ独自の表記も認められる個性の際立ったスパークリングワインです。

メトド・クラッシコとは?

フランチャコルタ3

メトド・クラシッコは瓶内二次発酵を指す言葉であり、別名シャンパーニュ方式とも呼ばれます。
ステンレスタンク内で二次発酵を行うシャルマ方式(マルティノッティ方式)とは違い、瓶の中で二次発酵を行います。最初に通常の白ワインや赤ワインを醸造し、そのワインと共に生産者によってはリザーブワインを混ぜるなどしてスパークリングワインのベースとなるスティルワインを作ります。このスティルワインに酵母と糖分を加えることによって瓶の中で二次発酵が起こり、アルコールと炭酸ガスが発生します。
この炭酸ガスが液体の中に溶け込むことによってスパークリングワインが出来上がるのです。メトド・クラッシコでは瓶内の熟成期間によって、その複雑味は増していき熟成とともに旨味も充実していきます。瓶内での二次発酵を終えた後に澱引きと補填が行われます。補填はワインの辛口度合いを決めるものであり、生産者によって最後の隠し味とも言うべきものであるので、中身が何であるかは明かされないこともあるようです。

フランチャコルタの味わい

フランチャコルタ4

フランチャコルタの味わいには氷河を削りながら湖の先に堆積した土壌の違いとイゼオ湖の影響が大きく関係します。
世界のスパークリングワインは比較的冷涼なエリアで造られており、フランチャコルタでは渓谷を通ってくる涼やかな風の冷気を湖が蓄えるとともに、寒い時期には昼間の日照の温気を保つことも出来ます。湖が生産地域の気温を調整することでブドウ生育に適した環境が生まれ、果実味の充実したワインが出来上がります。また場所によっては寒暖の差も激しくないことから、味わいは穏やかでミネラル分も柔らかいスムーズな飲み心地を感じられます。
ブドウ本来の果実味を生かすために、樽熟成のニュアンスやドサージュによる甘さの強化は控えめになり、凝縮した果実の旨味がダイレクトに表現されたスパークリングワインが多いのも特徴です。

フランチャコルタの歴史

フランチャコルタ5

当時強大な権力をもっていた修道院が、管理下にあった広大な土地の改良と耕作を行ったおかげで、1100年頃に他の土地への物品の輸送や商業活動を行う際に支払うことになっていた関税から免除されることになりました。そのため、この地域はラテン語で「免税地」を意味するフランカエ・クルテス(Francae Curtes)となり、フランカエ・クルテスから「フランツァクルタ」という地名が生まれたのです。
フランチャコルタ地方では古代ローマ時代よりブドウ栽培が盛んだったことがプリニウスやコルメッラなどの著作、先史時代の種子の発見から明らかになっています。また、イゼオ湖にはローマ法王の別荘地があったことも分かっています。
そして時は経ち1961年、ベルルッキ社のフランコ・ジリアーニ氏が「ピノ・ディ・フランチャコルタ」を初めて生産したことをきっかけとして、フランチャコルタの名を冠したワインが誕生しました。フランチャコルタ地方がミラノから近いということもあり投資が加速し、フランチャコルタは瞬く間に成長していきました。1967年にはワインの格付けであるD.O.C.(統制原産地呼称)の認定を受け、1995年には、スパークリングワインとしてイタリアで初めてD.O.C.G.(統制保証付原産地呼称)に昇格したのです。

フランチャコルタとシャンパーニュの違い

フランチャコルタ6

フランスのシャンパーニュと同じ製法で造られるためにシャンパーニュとの違いはよく語られますが、二つのワインは同じ製法でも全く違った個性を持っています。
一般的にシャンパーニュは冷涼な気候下で石灰質の多い比較的硬いミネラル分を持ったブドウからワインが造られるために、硬いミネラル分を和らげる長い瓶内熟成期間やドサージュの際にやや糖度を高める作業をするものも少なくありません。寒暖の差も大きく、キレのある酸味と硬質なミネラルが長い熟成によって旨味に変わり、ドサージュによって絶妙なバランスの取れたシャンパーニュは芸術作品と言っても良いほど完成度が高く世界の人たちを魅了しています。
フランチャコルタは先ほどお話ししたように比較的穏やかなミネラル分とフレッシュな果実味が魅力なので、長い熟成期間やドサージュに頼ることなくブドウ本来の果実味を表現することに重きを置く生産者が多いように思われます。
シャンパーニュが持つ鮮やかな酸味に比べフランチャコルタは比較的丸みのある穏やかな酸味と充実した果実感があることで口当たりは優しく、全体のバランスも取りやすいためドサージュの量も少なく、限りなくブドウの味に近いフレッシュさとバランス感が魅力のワインです。

フランチャコルタの種類

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フランチャコルタは使用されるブドウ品種や瓶内熟成期間等の違い、出来上がったワインの残糖量によっていくつかのタイプに分けられます。ここではそれらいくつかの種類をご紹介します。

フランチャコルタ・ブリュット

ブリュットは辛口であり1リットルあたりの残糖量が0~12グラムに規定されています。
多くの生産者がこのブリュットを生産しており、生産者の中で最も生産量が多いタイプと言えるでしょう。残糖量の幅が広く、近年トレンドとなっている極辛口のパ・ドセやブリュット・ナチュール、エクストラ・ブリュットもこの範囲内にあります。つまり生産者は規定内で辛口度合いを決めてワイナリーの顔となるブリュットを造るので、生産者が思う味わいの方向性を明確に感じられるワインとして飲んで頂きたいワインです。

フランチャコルタ・サテン

サテンの意味は織物の三原組織の1つ「朱子織り、朱子組織」と関連があると言われ、ワインの滑らかな口当たりが織物の肌触りとして表記されているとも考えられます。
サテンを造っている生産者は限られており、サテンはフランチャコルタの中で最も貴重かつ重要なタイプといえます。サテンには黒ブドウ品種の使用が認められておらず、シャルドネ、ピノ・ビアンコの2種類の白ブドウからのみ造ることが許され、打栓前の瓶内最低熟成期間は24ヶ月です。
さらに他のタイプよりもガス圧を低くすることが定められています。ガス圧が低くなるとブドウ本来の味わいを感じやすくなり、栽培されるブドウに自信がないと造れないので、サテンが美味しい生産者はフランチャコルタの優良生産者と言っても過言ではありません。

フランチャコルタ・ロゼ

白ブドウが主要なフランチャコルタではロゼの生産量はさほど多くはありませんが、場所によっては果実味豊かなピノ・ネロが栽培され、赤い果実のニュアンスを十分に生かしたフルーティーかつチャーミングなロゼワインが生産されます。また生産者によってはこの豊かな果実味を生かしてドゥミ・セックと呼ばれる中辛口のロゼワインを造る生産者もおり、打栓前の瓶内最低熟成期間は24ヶ月です。
黒ブドウは皮からのタンニンや苦みが多くなるのでエクストラ・ブリュットのような辛口にするよりもやや残糖量を多くすることによって苦味などを和らげ、バランスの整ったふくよかな味わいを楽しむことができるのがロゼの魅力とも言えます。

フランチャコルタ・ミッレジマート

ミッレジマートとは収穫年を記載したワインであり、二次発酵の前に作られるベースワインは同一年に収穫されたブドウから生産されます。すなわちこのワインは他のフランチャコルタのように複数ヴィンテージをブレンドしたりすることなく、その年の個性を表すために生産されるワインであり、生産者によってはブドウの出来が良かった年のみに生産され、打栓前の瓶内最低熟成期間は30ヶ月です。
一般的には比較的ブドウの出来が良かった優良年に造られることが多く、他のフランチャコルタよりも複雑味があり魅力的な味わいとなっています。長期熟成にも適しており、蜜のような旨味が増した味わいが好きな方にお勧めのタイプです。

フランチャコルタ・リゼルヴァ

打栓前の瓶内最低熟成期間は最長の60ヶ月。二次発酵の時間が長くなればその分複雑味を増しワインの味わいもより深みが増します。
生産者がリゼルヴァを生産するにはその年のブドウが非常に優れており、より長い熟成期間にも耐えられることから造られたワインであり、ミッレジマートのように優良年のみに生産されることもあります。
長い熟成を経ないと生まれない複雑な旨味を持つスパークリングワインは希少であり、生産者が自信をもってリリースをする最高傑作と言えるでしょう。

フランチャコルタを楽しむためのペアリング

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スパークリングワインはどんなお食事とも合わせやすいと言われますが、実際はその硬いミネラル分や酸が強い個性から料理の味わいに反発するものも存在します。しっかりと冷やして飲まれることからスムーズな口当たりがペアリングできているような錯覚に陥るのかもしれません。
そんな中で穏やかな口当たりと果実味豊かな味わいであるフランチャコルタは、イタリア料理はもちろん和食との相性も良いと言われています。
和食は料理の中にみりんやお砂糖などの甘みを加えるような材料が使われ、食事に程良い甘みがあるので、ワインにも穏やかな果実味があると食事とワインのペアリングが深まります。
ここからは具体的なペアリング方法等についてお話をしたいと思います。

シーフードとのペアリング

お魚と合わせる場合、湖の近くで造られるワインということもあり海の魚よりは淡水魚の方が合うと思われます。例えばサーモンや鮎、鱒や鰻など川魚との相性が良いでしょう。またロンバルディア州はキャビアの養殖場などもあり、魚卵との相性も良くイクラなども試してみたいところです。さらにカニなどの甲殻類との相性も良いのではないでしょうか。
貝類との相性も良くアサリや帆立、牡蠣を焼いたり蒸したりした料理も美味しそうです。
いずれにしてもシーフードと合わせる際には生よりは軽く火入れをするなどの調理をした方がフランチャコルタとの相性が良いかと思われます。

イタリア料理とのペアリング

イタリア料理とのペアリングは、先程のシーフードペアリングの中でお話したことをヒントに考えていくと良いでしょう。
前菜であればサーモンのカルパッチョやキャビアの冷製のパスタ、プリモピアットとしてアサリやホタテを使ったパスタ料理や牡蠣などのリゾットを合わせても良いでしょう。
またロゼやミッレジマートのように熟成感のあるものであれば、ホロホロ鶏のローストや豚肉をローストしたポルケッタなど白身肉やチーズを使った料理と合わせることも可能です。

お勧めのフランチャコルタ3選

① 穏やかな口当たりと、フレッシュ感あふれる果実味が好みの方は

おすすめのフランチャコルタ1

モンテ・ロッサ
“プリマ・キュヴェ”フランチャコルタ・ブリュット
/750ml

6,537円 (税込)

商品コード:6178

フランチャコルタの魅力である穏やかな口当たりとフレッシュな果実感が際立っており、鮮やかな鮮度をスマートに感じられます。泡立ちもクリーミーでバランスも良く、品のある飲みやすさとペアリングの幅も広いので、よく冷やして爽やかに飲んでほしいワインです。

② しなやかな酸味、ミネラル感など華やかな味わいを求める方は

おすすめのフランチャコルタ2

モンテ・ロッサ
“サンセヴェ”フランチャコルタ・サテン・ブリュット
/750ml

7,866円 (税込)

商品コード:6179

サテンタイプはガス圧がやや低めになっており、食中酒としても適しています。
しなやかな酸味の伸びを感じながら非常にエレガントかつ凝縮したぶどうの旨味を味わえます。果実のニュアンスがしっかりしていて滑らかな口当たりは可憐で優雅という表現にふさわしいワインです。

③ 熟成による凝縮した旨味や複雑味などを試してみたい方には

おすすめのフランチャコルタ3

モンテ・ロッサ
“カボション”フランチャコルタ・フオリセリエ
/750ml

16,668円 (税込)

商品コード:26190

やや長い熟成を得ることで複雑味や熟成感を感じることができるワイン。味わいは豊かでまろやかさが感じられ、蜜のような旨味が長い余韻の中に広がっていきます。やや大振りのグラスで飲むとよりその深い味わいを楽しむことができるでしょう。

まとめ

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湖の近くで造られることによって、穏やかな口当たりとクリーミーな泡立ちが楽しめるフランチャコルタ。白ブドウを中心とした果実味が魅力であり、タイプによってその果実味をフレッシュに楽しんだり、熟成感のある旨味として楽しむなど様々な選択肢もあります。またその果実味があるからこそ淡水魚や貝類、また料理にお砂糖などを使う和食との相性は非常に良いかと思われます。スパークリングワインには食前酒的な要素が強い印象がありますが、ペアリングを含めた食中酒としてのフランチャコルタを是非お楽しみ下さい。

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